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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)8013号 判決

主文

一  被告は、原告らに対し、各一一三八万八七二三円並びに右各金員に対する昭和五八年一一月一三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その一を被告の、その余を原告らの各負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告らに対し、各三七五一万八八六〇円並びに右各金員に対する昭和五八年一一月一三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 被告は、自動車競争及び各種スポーツ競技その他の興業並びに仲介、不動産及び自動車競争施設の賃貸並びに運営等を目的とする株式会社であって、三重県鈴鹿市稲生町七九九二番地にレーシングコース「鈴鹿サーキット」(以下、「本件レース場」という。)を設置してこれを運営するとともに、本件レース場においてオートバイ等のスポーツ走行(競技を目的としない走行)を行う者のクラブである「鈴鹿モータースポーツクラブ」(以下、「SMSC」という。)を組織してこれを運営している株式会社である。

(二) 原告小出勲はSMSCの会員であった訴外亡小出正樹(以下、「正樹」という。)の父であり、原告小出勢津子は同人の母である。

2  事故の発生

正樹は、次の事故(以下、「本件事故」という。)により多臓器損傷等の傷害を受け、これを原因とする心不全により昭和五八年一一月一七日死亡した。

(一) 日時 昭和五八年一一月一三日 午前一〇時四四分ころ

(二) 場所 本件レース場西コース (以下、「本件コース」という。)の通称スプーンカーブの手前の第一八番ポスト(監視所)付近(以下「本件事故現場」という。)

(三) 態様 正樹は、本件コースをレース専用のオートバイを運転して走行中、後続の訴外藤田光広、同奥村正治、同辻本睦夫、同近藤仁の各運転する四台のオートバイのうち、先頭の一台に追突又は接触されて転倒し、他の三台にも次々と衝突された。

3  被告の責任

(一) 工作物責任

本件レース場は、全体として土地の工作物に該当し、本件事故当時、被告においてこれを占有していたものであるところ、初心者を含む一般人のスポーツ走行の用に供するレーシングコースとして通常有すべき安全性を欠いていたものであるから、その設置・保存に瑕疵があったというべきであり、これを詳述すれば、以下のとおりである。

(1) 本件コースは、本件レース場の西側の一部であるが、独立のレーシングコースとして使用することができ、本件事故当時、SMSC会員のスポーツ走行の用に供されており、その場合これを行う者が自己の運転技術とオートバイ等の性能の限界までスピードを追求することが当然予定されているものであるところ、本件事故当時における本件コースの形状は概ね別紙図面のとおりであって、本件事故現場手前(前後は走行時の進行方向による。以下、前後をいう場合はいずれも同じ。)の右まわりのカーブの内側(右側)には小高い丘が迫っていて前方の見通しを妨げているとともに、事故現場である第一八番ポスト付近を頂上にして、それまで登り坂であったのが同所付近から急な下り坂になっていたため、別紙図面記載の第一六番Sポストから一七番ポスト及び一八番ポスト方向へ走行して行くオートバイの運転者にとって、前方(第一七番ポスト以遠)の見通しが極めて悪い状況にあった。

その上前記カーブの手前から本件事故現場付近に至るまでの間には、コース上を監視して危険な事態が生じた場合にはこれを走行者に知らせ、必要な指示を与えるための監視員を置く場所として、別紙図面記載のとおり、第一六番ポスト、第一六番Sポスト、第一七番ポスト、第一八番ポストの順に四箇所の監視ポストが設置されていたのであるから、前記のような高速走行に使用されるレーシングコースの管理者としては、オートバイの走行時には常に第一六番ポスト及び第一八番ポストのみならず、第一七番ポストにも監視員を配置し、第一七番ポストと第一八番ポストの間において、進行してくる高速走行車に危険をもたらすような異常事態が発生したときは、直ちに後続車に異常事態の発生を知らせ、走行の中止等を命じうるような態勢をとっておくべきであり、右態勢をとっておかなければ、本件のような事故発生の危険があることは容易に予見し得たものというべきである。

しかるに、被告は、本件事故当時、第一六番Sポスト及び第十八番ポストに監視員を配置していたが、第一七番ポストには監視員を配置していなかったものであり、この点において本件コースは安全性に欠けていたものというべきである。

(2) 正樹は、事故の日初めてレーシングコースにおいて、かつ初めてレース専用のオートバイを運転してスポーツ走行をしている間に本件事故に遭遇したものであるが、スポーツ走行においても、高度の運転技術を有する運転者などが競技に向けての練習のため極限の高速度で走行することもあるので、そのような熟練者にまじって初心者が走行すると、その速度差や走行ラインの不統一のため接触・衝突等の事故の発生の危険が高まることは明らかであるから、レーシングコースの管理者としては、初心者と熟練者とを分けてそれぞれのグループごとに走行させ、両者が同時に走行することがないような態勢をとっておくべきであった。

しかるに、本件事故当時被告は、そのような態勢をとることなく、正樹のような初心者と前記奥村らのような熟練者とを同時に走行させていたものであり、しかも熟練者らに初心者を識別させて注意を換起させるため、初心者にマーク等をつけさせる等の措置さえも講じないで、本件コースのみで六〇台もの多数のオートバイを同時に走行させていたのであるから、その危険性は一層大であったというべく、この点において本件コースの管理に不適切な点があったものというべきである。

(3) 正樹が運転していたのは、前記のとおりレース専用のオートバイであったが、この種のオートバイは公道を走行する一般市販車のオートバイをレース用に改造したプロダクションに較べて操縦や整備が難しく、初心者が運転するのには不適当なオートバイであった。従って、そのようなオートバイの操縦や整備に慣れていないものが、これを運転してコース上における速度やライン取りも分らないままで走行するようなことをすれば、他の高速走行車の走行ラインに入り込んでその進路を妨げ、接触・衝突等の事故発生の危険が高まることは明らかであるから、レーシングコースを管理し、かつSMSCを組織してこれを管理運営する被告としては、SMSCに入会し、本件レース場で初めてオートバイを運転しようとする者に対し、走行の際のラインの取り方やオートバイの整備方法等を講習会を開催するなどして教示するとともに、初めからレース専用のオートバイには乗らないように勧告し、更にコース内の自由な走行に先立って実地に指導者による走行訓練等を施したのちでなければ、コース内の自由な走行を許さない態勢をとるべきであった。

しかるに被告は、SMSCの入会資格としては、二輪会員については自動二輪免許所持者であること、四輪会員については普通免許所持者であることのみで足りるとし、入会時にテキストによる簡単な座学講習を行っただけで、初心者に対しても実技指導をせず、かついきなりレース専用のオートバイでコース内を自由に走行することを許容していたものであり、この点においても本件レース場の管理に不適切な点があったものというべきである。

(二) 過失責任

前記(一)の事実関係からすれば、被告には前記(一)の(1)ないし(3)のような措置をとるべき注意義務を負っていたものというべきであるところ、被告がこれを怠ったことは前記のとおりであり、また、レーシングコースにおけるスポーツ走行は、前記のような高速走行のために生命・身体に対する特別の危険性を伴うものであるから、右危険性に対する十分な認識能力・判断能力を備えていないおそれのある未成年者をSMSCに加入させてスポーツ走行を行わせるに当っては、保護者の承諾を慎重に確認すべき注意義務があるものというべきであるところ、被告は、右義務を怠り、原告らの承諾の有無を確認することなく正樹をSMSCに入会させたものであるから、被告にはこの点においても過失があったものといわなければならない。

(三) 安全配慮義務違反

正樹は、SMSCに入会したうえ、本件事故当日、被告との間で本件コースにつき施設利用契約を締結してオートバイを運転していた者であるから、被告は、右契約に基づき、正樹が本件コースを利用するにあたって生命身体の安全が確保されるよう配慮すべき義務を負い、その配慮として前記(一)の(1)ないし(3)のような措置をとるべきであったのに被告がそのような措置をとらなかったことは前記のとおりであるから、被告は右安全配慮義務にも違反したものというべきである。

(四) 因果関係

しかるところ、本件コースに前記(一)のような瑕疵がなく、また、被告が前記(二)の注意義務及び前記(三)の安全配慮義務を尽していたならば、本件事故が発生していなかったことは明らかであるから、被告は、右事故によって生じた損害を賠償する責任がある。

4  損害

(一) 正樹の逸失利益

正樹は、本件事故当時満一八歳の健康な男子(高校三年生)であり、同人の生活環境からすると大学に進学することは確実であったから、本件事故に遭わなければ大学を卒業する二二歳から六七歳までの四五年間就労可能であり、その間毎年少なくとも昭和五七年賃金センサス第一巻第一表、産業計、旧大・新大卒男子労働者の全年令平均賃金額にベースアップ分として五%加算した四七九万〇七三〇円程度の収入を得ることができたはずである。そこで、その間の総収入から収入の三割に当たる生活費を控除し、ライプニッツ式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、正樹の逸失利益の死亡当時の現価を算定すると四九〇三万七七二一円となる。

(算式)

(281,100×12+1,189,400)×1.05=4,790,730

4,790,730×(1-0.3)×(18.1687-3.5459)=49,037,721

(二) 権利の承継

原告らは、正樹との間の前記身分関係(正樹には他に相続人は存在しない)に基づき、正樹の前記逸失利益の損害賠償請求権を法定相続分に従い、各二分の一(二四五一万八八六〇円)宛相続した。

(三) 原告らの慰藉料

正樹は、原告らの唯一最愛の息子であり、同人を本件事故によって失った精神的苦痛は測り知れないものがあるから、これに対する慰藉料の額としては、各一〇〇〇万円が相当である。

(四) 弁護士費用

原告らは、本件訴訟の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に委任し、その費用及び報酬として各自三〇〇万円を支払うことを約した。

よって、原告らは、被告に対し、民法七一七条一項、七〇九条又は四一五条に基づき、それぞれ三七五一万八八六〇円並びに右各金員に対する本件事故発生の日である昭和五八年一一月一三日から支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否及び主張

1  請求原因1及び2は認める。

2  同3について

(一) (一)の冒頭のうち、本件レース場が全体として土地の工作物に当たり、被告がこれを占有していることは認めるが、その余は否認する。

(二) (一)の(1)のうち、本件コースが本件レース場の一部であって、独立のレーシングコースとして使用することができ、本件事故当時SMSC会員のスポーツ走行の用に供されていたこと、スポーツ走行の場合高速走行が予定されていること、本件コースの本件事故当時における形状が概ね別紙図面のとおりであること、本件事故現場手前の右まわりのカーブの内側(右側)に沿って低い丘が存在すること、右カーブの出口から第一八番ポストにかけて登り坂になっていること、右カーブの手前から本件事故現場付近までの間に第一六番ポスト、第一六番Sポスト、第一七番ポスト及び第一八番ポストが設置されており、本件事故当時、第一六番Sポスト及び第一八番ポストには監視員が配置されていたが、第一七番ポストには監視員が配置されていなかったことは認めるが、第一六番Sポスト付近から第一七番ポスト及び第一八番ポスト方向へ走行して行くオートバイの運転者にとって前方の見通しが悪かったとの点は否認する。

本件事故現場手前の第一六番Sポストから第一七番ポストにかけてのカーブは緩いカーブで、その右側の丘も低く勾配もなだらかであるうえ、右カーブとその右側の丘との間には約三メートルの安全地帯が設けられており、第一七番ポストから第一八番ポストに向う登り坂も直線コースであるから、前方の見通しが悪いというようなことはない。

また、第一七番ポストに監視員を配置していなかったことは事実であるが、競技を目的としないスポーツ走行の際には、走行に支障が生じれば直ちに走行中の全車両に走行の中止を命じればよく、それだけ危険性も少ないのであるから、監視ポストへの監視員の配置もその危険性に対処するのに必要な限度で足り、すべての監視ポストに監視員を配置することまで必要とされるものではないというべきであるところ、本件事故はスポーツ走行の際に発生したものであるから、補助監視ポストに過ぎない第一七番ポストに監視員を配置していなかったからといって、本件コースがレーシングコースとして通常有すべき安全性を欠いていたことになるものではない。のみならず本件事故は、正樹の高速車の走行ライン上を不安定な姿勢で低速走行をするという運転者としての通常の危険認識能力及び危険回避能力を前提とするスポーツ走行においては通常予測し得ない異常な行動によって発生したものであり、かつ、第一七番ポストから第一八番ポストにかけてのコースは、前記のとおり直線の登り坂であって見通しは良く、過去に事故が発生したこともないのであるから、このような異常な事態にまで対処しうるように監視員を配置していなかったからといって、本件コースが通常有すべき安全性を欠いていたといえないことは明らかである。

(三) (一)の(2)のうち、本件事故当時被告が本件コースでのスポーツ走行において、初心者と熟練者を分けることなく同時に走行させていたこと、正樹が本件コースでスポーツ走行したのは本件事故の日が初めてであることは認めるが、正樹が本件事故の日初めてレーシングコースで、かつ初めてレース専用のオートバイを運転してスポーツ走行したとの点は不知、その余は否認する。

スポーツ走行は、競技を目的とするものではなく、練習のための走行であるから、自動二輪免許を有する程度の技量と知識を持っている者がルールに従い一定の速度を守って走行しさえすれば、安全で危険性のないものであり、また、本件事故当時、本件コースを走行していたオートバイの台数は四八台であって、六〇台という制限台数を下まわるものであるから、過密走行による危険というようなものも存在していなかった。

(四) (一)の(3)のうち、本件事故当時正樹が運転していたオートバイがレース専用であったこと、被告がSMSCの入会資格として、二輪会員については自動二輪免許所持者であること、四輪会員については普通免許所持者であることとしており、本件事故当時、初心者に対しても指導者による実地の走行訓練等を行っていなかったことは認めるが、その余は否認する。

オートバイを運転して本件コースを走行する者は、初心者といえどもレーシングコースを安全に走行するのに必要な技量と知識とをすでに習得している自動二輪免許の取得者に限られているのであり、しかも被告は、コースでの走行に先立ってSMSCに入会させ、安全走行のためのルールとマナーを教示するための講習を受講させたうえ、筆記試験をしてその知識を確実なものとしていたのであるから、原告らの主張のような措置をとらなかったからといって、本件コースの安全性が害されることになるものではない。

(五) (二)及び(三)は否認する。

本件事故の発生につき被告に民法七〇九条の過失責任も民法四一五条の債務不履行責任(安全配慮義務違反)もないことは、前記(二)ないし(四)のとおりである。

また、被告は、正樹に対し、SMSC入会につき親権者の承諾を得て裏面の誓約書に親権者の署名捺印をもらってくるよう指示して入会申込書を持ち帰らせることにより、原告らに承諾の機会を与えており、原告らの右機会を侵害した事実はないから、この点についても被告が過失責任を問われるいわれはない。

(六) (四)も否認する。

本件事故は後記三のとおりの正樹の過失によって発生したものであって、原告ら主張のような瑕疵ないし被告の義務違反によるものではない。

3  請求原因4のうち、原告らと正樹との間の身分関係は認めるが、その余はすべて知らない。

三  抗弁(過失相殺)

レーシングコースにおいては、オートバイは高速で走行するのが常態かつ前提とされているのであって、そのようなコースにおいて、特定のオートバイが低速で走行すれば、他の高速走行車の進路を妨害しこれとの衝突事故が発生する危険が大であるから、オートバイの運転者はみだりに低速走行をしてはならず、なんらかの事情で高速走行をすることができなくなったときは、後続車の動向に注意してその走行ライン上を走行しないようにし、かつ、直ちにコース上から離脱して安全地帯に入る等の措置をとるべきものである。

しかるに正樹は、他のオートバイが時速一三〇ないし一五〇キロメートルの高速走行を行っている中で、ただ一台後続車の動向に注意を払うこともなく、本件事故現場の手前約一八〇メートル辺りから時速五〇ないし六〇キロメートルの低速で、しかも右まわりのカーブのために高速走行車の走行ラインとなっているコースの左側沿いに走行ラインをとり、かつエンジン調整のために自車のガソリンタンクの左下部に手を触れるという極めて不安定な姿勢で走行を続け、安全地帯に入ろうともしないという異常な行動をとっていたのであるから、本件事故の発生については、正樹に重大な過失があり、これが本件事故発生の主たる原因をなしていたものである。

四  抗弁に対する認否

正樹が本件事故現場の手前からコースの左側をコース内における通常走行よりも低速で走行していたこと、コースを離脱して安全地帯に入らなかったことは認めるが、その余の点は否認する。

右程度の速度をもって特に低速ということはできないし、スポーツ走行には、自己の運転技術とオートバイの性能の限界をもって所要時間の短縮に挑戦する 「タイムアタック」、コーナリングの練習のための「コーナアタック」、コースの路面の状態等の観察を目的とする「コース観察走行」、基本走行ラインを習得するための「コース・ライン習得走行」、エンジンの調子を観る「ならし走行」など走行する者の技量と目的によって様々な走行があるのであって、一概に低速走行が危険であるとか無謀であるとか決め付けることは到底できないものである。

第三  証拠〈省略〉

理由

一  請求原因1及び2(本件事故の発生)は当事者間に争いがない。

二  そこで、被告の責任について判断することとし、まず工作物責任の有無について検討するのに、本件コースを含む本件レース場が全体として土地の工作物に当たり、本件事故当時被告がこれを占有していたことは、当事者間に争いがない。

ところで、民法七一七条一項にいう「瑕疵」とは、その物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、土地の工作物に瑕疵があるといえるかどうかについては、その物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべきものであるから、以下、このような観点から順次検討する。

1  本件事故当時における本件コースの形状が概ね別紙図面のとおりであること、本件事故現場手前の右まわりのカーブ内側(右側)に丘が存在すること、右カーブの出口から第一八番ポストにかけて登り坂になっていることは当事者間に争いがなく、〈証拠〉を総合すれば、次の事実が認められこの認定を左右するに足りる証拠はない。

(一)  本件事故当時、本件コースの事故現場手前に右まわりのカーブが存在することは前記のとおりであるところ、右カーブは、事故現場の四〇〇ないし五〇〇メートル手前で、かつ第一六番ポスト(本件コースの監視ポストの設置状況は別紙図面記載のとおりである。)のやや手前辺りの地点から始まって第一七番ポストをやや過ぎた事故現場の約一〇〇メートル手前辺りの地点で終り、二つのカーブとその中間の短い直線で構成され全体として右に大きく緩かに曲るカーブ状になっているものであるが、その内側(右側)には小高い丘があって、そのすその部分がコースに沿った急な登り斜面となっていたため、その斜面に遮られて第一六番ポストないし第一六番Sポストから第一七番ポストの手前辺りにかけての地点より第一八番ポスト方向への見通しはあまり良くない状態であった。

(二)  もっとも、第一七番ポストを過ぎる辺りから第一八番ポスト付近の登り坂の頂上付近までの約一〇〇メートルの区間は直線状のコースとなっているため見通しは良好であったが、頂上付近にある第一八番ポストを過ぎる辺りから先は下り勾配となっているため見通しがききにくい状況であった。

(三)  なお、前記カーブから本件事故現場付近に至る間の本件コースは、幅員約九メートルの平たんなアスファルト舗装路面で、その両側には芝生の安全地帯が設けられているが、右安全地帯の幅は前記カーブの内側(右側)は他の部分と比較するとかなり狭くなっている。

2  本件事故当時、正樹がスポーツ走行中であり、コースの左側をコース内の通常走行よりも低速で走行していたことは当事者間に争いがなく、〈証拠〉を総合すれば、本件事故現場は、第一八番ポストの約二五メートル手前で、第一七番ポストからの登り坂のほぼ頂上かその手前辺りの地点であったこと、本件事故は、正樹が比較的長い時間を要して本件コースを一周し、この一周をしただけでスタート地点に戻り同所で待っていた義兄の訴外亀井肇に対して途中でエンジンが停止したことを話し、プラグの交換をするなどして再度走行を開始し、本件事故現場に至ったときに発生したものであり、本件事故の直前の正樹車の速度は五〇ないし六〇キロメートルで、正樹はエンジンの不調のためか、車体の左側のガソリンタンクの下辺りを触わるような姿勢をとっていたこと、本件事故当時、第一七番ポストから第一八番ポストにかけての本件事故現場付近を走行するオートバイの速度は、正樹車を除いてはいずれも時速一二〇ないし一三〇キロメートルであったこと、前記のとおり本件コースは右にカーブしているため、高速でこのカーブを通過しようとする場合、右膝が路面に着くくらい大きく車体を傾けざるを得ないので運転者の眼の位置が低くなり、走行ライン(できるだけ高速でコースを回るために運転者によっておのずから選択される走行線)も内側(右側)を選択することになるので、第一八番ポスト方向への見とおしは一層悪くなること、本件事故直前の正樹車の位置は、概ね前記カーブを出る際に選択される走行ライン上にあったこと、訴外藤田光広、同奥村正治、同辻本睦夫及び近藤仁らは、前認定のような見通し不良のため第一七番ポストを過ぎた辺りで初めて正樹車を発見したが、前記のとおりの高速のためこれを避けることができず、本件事故の発生に至ったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

しかるところ、本件事故当時、第一六番Sポスト及び第一八番ポストには監視員が配置されていたが、第一七番ポストに監視員が配置されていなかったことは当事者間に争いがなく、前掲甲第八号証、証人小西洋志及び同前山和彦の各証言を総合すれば、監視員には競技役員としての資格を有する者又は一定期間監視員としての訓練を受けた者が当てられており、各監視ポストに配置された監視員は、本来自分が配置された監視ポストから進行方向に向って次の監視ポストまでの区間を確実に監視し、右区間内に危険が発生した場合に信号旗等をもって後続車の運転者にこれを知らせることを主たる任務とするものであるが、次の監視ポストに監視員が配置されていない場合には、監視員が配置されている監視ポストまで監視区域が拡張されること、従って、第一七番ポストに、監視員が配置されていない場合は、第一六番Sポストに配置された監視員が同ポストから第一八番ポストまでの区間を監視することになるが、前記のとおり第一六番Sポストから第十七番ポスト以遠の見通しは良くないため、第一七番ポストから第一八番ポストまでの区間で発生した危険を迅速に後続車に知らせるのは困難であること、これに対し、第一七番ポストからは第一八番ポスト方向の見通しが良好であり、第一七番ポストの監視員が表示した手旗等の信号も第一六番Sポスト方向から走行してくるオートバイの運転手から容易に視認できることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定の各事実及び前記争いのない本件事故の態様によれば、本件事故は、本件コースに1で認定したような見通しの不良がなければ発生していなかったものと推認され、また、第一七番ポストに監視員が配置されていたならば、その監視員において正樹車が他車よりも著しい低速度で走行していることを発見し、その異常さに気付いて事故防止のための適宜の措置をとり得たものと推認されるから、本件事故と右の見通し不良及び第一七番ポストに監視員を配置しなかったこととの間には因果関係があるといわざるを得ない。

3  そこで、次に本件コースに前記のような見通し不良の場所があったこと及び第一七番ポストに監視員を配置しなかったことが、通常有すべき安全性を欠いたことになるかどうかについて検討するのに、成立に争いのない甲第六、第七号証、同第一二号証の七、同第一三号証の六、同第一七号証及び弁論の全趣旨を総合すれば、自動車レースは様々の変化を有するコースの中で操縦技術を駆使し、その走行速度を競うところにスポーツとしての意義があるのであるから、レーシングコースにおいては、コースの変化は必然であって、種々の形態のカーブ及びアップ・ダウンが本質的に要求されるものであることが認められるところ、アップ・ダウンがあればその登り坂の頂上付近から先の見通しが不良になることは必然であって、レーシングコースに見通しの悪い場所が生じるのは避け難いことであるから、本件コースに前記のような見通しの悪い場所があったということから直ちに本件コースが通常有すベき安全性を欠いていたということはできない。

〈証拠〉を総合すれば、本件レース場は、SMSCのスポーツ走行のほか国際的なレース等にも使用されており、そのため国際モーターサイクリスト連盟(FIM)の認可を受けるのに必要な「モーターサイクル・ロードレース・コースに関するFIM基準(SRRC)」に適合するように造られていること、右基準は毎年国際自動車スポーツ連盟(FISA)によって発行される「モーターレーシング・コースの安全基準」を考慮に入れて作成され、監視ポストの数と位置につき、サーキットのいかなる部分も監視されない状態に放置されてはならないこと、各ポストはその前後のポストと眼でコミュニケートできるものでなくてはならず、これが可能でない場合は、この条件を満たすため追加のポストと人員が配置されなくてはならないことなどが定められていること、本件事故当時、本件レース場には右基準に従って三一箇所(本件コースのみでは一七箇所)の監視ポストが設置され、各ポストに配置された監視員による信号旗の表示などによってコース内の安全と秩序が保たれるようにされていたが、被告は、右監視ポストを常時監視ポスト一四とその他の補助監視ポストに分け(本件コースのみでは常時監視ポスト八、補助監視ポスト九となる。)レース時には全監視ポストに監視員を配置していたものの、スポーツ走行時には常時監視ポスト以外は監視員を配置しないことが多く、第一七番ポストも補助監視ポストとしていたところから、前記のとおり本件事故当時監視員が配置されていなかったことが認められる。

この点に関し、被告は、レースと走行に支障が生じれば直ちに走行中止の措置をとりうるスポーツ走行とでは危険性の程度が異なるものであるから、スポーツ走行の場合にまで全部の監視ポストに監視員を置く必要はなく、補助監視ポストに過ぎない第一七番ポストに監視員を置かなかったからといって、通常有すべき安全性を欠いたことにはならない旨主張し、証人前山和彦の証言中には右主張に副う供述部分がある。しかし、〈証拠〉を総合すれば、前認定の監視ポストの設置基準は、前認定のとおりレーシングコースに不可避ともいえるアップ・ダウン等による見通しの不良、カーブ等を高速で走行することに伴う可視制動距離(運転者が予期しない障害物に出会う前に安全に制動するために見ることができる最低距離)の不足及び高速走行自体に伴う運転者の生理的な視認性の低下等による危険性に対処し、コースの安全を確保することに主眼を置いて定められていることが認められるところ、右事由による危険性は、レーシングコースが高速走行を当然の前提としていることから生じるものであると考えられるから、レース時に限らずスポーツ走行時にも存在することは明らかというべきである。更に、被告がスポーツ走行において、初心者と熟練者を分けることなく同時に本件コースを走行させていたこと、正樹が本件コースでスポーツ走行をしたのは本件事故の日が初めてであり、被告が正樹に対し、コース内での自由な走行に先立って指導者による実技の講習を実施していなかったことは当事者間に争いがなく、〈証拠〉を総合すれば、スポーツ走行は、一般人が趣味として高速走行を楽しむため又は運転技術の向上のための練習として行うことが多いが、レーサーがレース出場(レースは時速三〇〇キロメートルに近い最高速度、時速二〇〇キロメートルをこえる平均速度で競われる。)のための練習として行っている場合もあって、その目的は必ずしも同一ではなく、また、練習のための走行をするについても、コース観察走行(路面の状態等の観察を目的とする。)、コース・ライン習得走行(基本走行ラインの習得を目的とする。)、ならし走行(エンジン等の調子を観ることを目的とする。)、タイム・アタック(ラップタイムの短縮を目的とする。)等があって、走行する者の技量と走行する目的により走行速度は一様ではなく、レースにおける実戦と同様に運転者の操縦技術とオートバイの性能の限界までスピードを追求する者がある一方、比較的低速度で走行している者もあること、そのためスポーツ走行においても、時には速度差による危険を感ずることがあること、スポーツ走行は、該当する運転免許証を持ち、走行上の基本的なルールについて講習を受けるなどしてSMSCサーキットライセンスを取得したものであれば誰でもこれに参加できたが、コースにおける走行ラインの取り方には、一定の法則はあるものの、複合カーブ等も存在するため初心者にとって自明なことではなく、ある程度練習を積んで身体で覚える必要があるところから、初心者が走行している場合には、ライン取りが一定しないことによる危険性もあること、本件事故当時、本件コース内を走行していたオートバイの台数は四八台であり、右台数は被告が本件コースを同時に走行するオートバイの制限台数として定めていた六〇台を下まわってはいるものの、初心者から熟練者まで様々な段階の者が同時に走行していたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。また、前掲乙第八号証の一、二によれば、昭和五八年八月に国際自動車スポーツ連盟によって行われた本件レース場の査察の結果の報告書中には、本件レース場の監視ポストにつき、「三一の常設マーシャルポスト」と記載した部分があることが認められる。

以上認定の各事実に照らすと、レース走行の場合と比較してスポーツ走行の方が危険性が少ないとはいい難く、更に、被告が第一七番ポストを補助監視ポストとしているのが国際基準等の一般化した基準に基づくものとも認め得ないので、被告の前記主張は採用することはできない。

更に被告は、本件事故は、正樹の高速車の走行ライン上を不安定な姿勢で低速走行するという運転者としての通常の危険認識能力及び危険回避能力を前提とするスポーツ走行においては通常予測し得ない異常な行動によって生じたものであり、このような異常な事態にまで対処しうるように監視員を配置していなかったからといって、本件コースが通常有すべき安全性を欠いたことにはならない旨主張するところ、本件事故のとき、正樹が高速車の走行ラインに当たるコース左側を時速五〇ないし六〇キロメートルの速度で走行していたことは前認定のとおりである。

しかしながら、正樹が被告から実技の講習を受けたことはなく、本件事故の日に初めて本件コースを走行したものであること、そのような初心者にとって走行ラインが自明なことでないことは前認定のとおりであるうえ、前掲甲第八号証及び証人前山和彦の証言によれば、被告がSMSC入会講習のテキストにしていた冊子には、低速走行時及び故障時等の注意としては、ならし運転等で走行速度が極端に遅い場合はあらかじめコースの右側を走行して他車に気をつけること、走行中マシントラブルや転倒、クラッシュなどでストップした場合は、直ちに安全なところに避難することとの記載があるのみで、危険な低速走行がどの程度の速度であるかについてはなんの記載もないことが認められ、この事実に前記のとおり事故現場手前のカーブが緩やかであったことを考え合わせると、正樹はどの程度の速度が危険な低速に当たるかについて適切な指導を受けていなかったこともあって、後続車から見えないところでその進路を妨害しているという自己の極めて危険な状況に対する認識を欠いていたものと推認され、また、成立に争いのない甲第一三号証の一、二及び証人辻本睦夫の証言を総合すれば、訴外財団法人日本オートスポーツセンターが運営する筑波サーキットにおいては、スポーツ走行をする者に対して義務的に実技講習を受けさせているが、昭和五七年当時の右実技講習の内容は指導者の運転するオートバイに追随して平均時速八〇キロメートル程度の速度でコースを三ないし五周するというものであったことが認められ、これによれば、公道上で高速の暴走行為を繰り返していたような者は別として、そうでない普通の運転者が初めてレーシングコースを走行する場合の適当かつ安全な速度は右程度であることがうかがわれる。

右認定の各事実によれば、正樹の行動が被告にとって予測し難いほど異常であったということはできず、かえって、見通しの良・不良にかかわらず高速走行を前提とし、何らの実技指導を受けていない初心者と熟練者とを区別なく同時にスポーツ走行をさせる被告としては、両者の間の速度差及び走行ラインの不一致等による危険が生じうることを予想し、高速走行をする熟練者が初心者の運転するオートバイを安全に回避することができるよう見通しの悪い場所にはこれを補う措置をとるべきであったといわざるを得ない。

4  以上1ないし3で認定・説示したところによれば、第一七番ポストに監視員を配置しなかったことは、スポーツ走行に利用されるレーシングコースとして通常有すべき安全性を欠いていたものといわざるを得ないから、本件コースの保存には瑕疵があったものと認めるのが相当である。

従って、被告は民法七一七条一項の規定により本件事故によって生じた損害を賠償する責任がある。

三  そこで、損害について判断する。

1  正樹の逸失利益

〈証拠〉によれば、正樹は、本件事故当時満一八歳の健康な男子で、大学進学率の高い府立高校に三年生として在学中で、共通一次試験受験の手続も終えて大学受験の準備中であり、正樹の父母である原告らは正樹を大学に進学させる十分な資力を有していたことが認められるから、正樹は、本件事故に遭わなければ、大学を卒業する二二歳から六七歳までの四五年間就労可能であり、その間毎年少なくとも昭和六二年賃金センサス第一巻第一表、産業計、企業規模計、旧大・新大卒の二〇歳ないし二四歳の男子労働者の平均賃金年額二五四万七〇〇〇円程度の収入を得ることができるはずであったと推認することができ、またその間の正樹の生活費は右収入の二分の一であると認めるのが相当である。そこで、右年収を基礎に、生活費として収入の二分の一、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息をそれぞれ控除して、正樹の逸失利益の死亡時における現価を算出すると、二六五五万四八九四円となる。

(算式) 2,547,000×(1-0.5)×(24.4162-3.5643)=26,554,894

2  権利の承継

原告小出勲が正樹の父、同小出勢津子が正樹の母であることは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば正樹には他に相続人がいなかったことが認められるから、原告らは正樹の死亡に伴ない右逸失利益の損害賠償請求権を法定相続分に従って二分の一宛相続したものと認められる。

3  慰藉料

原告小出勲本人尋問の結果によれば、正樹は原告らの唯一の息子で、原告らが同人に期待するところ大であったことが認められ、この事実に本件証拠上認められる諸般の事情を合わせ考慮すると、正樹の死亡によって原告らの受けた精神的苦痛に対する慰藉料は、右両名それぞれにつき、各七五〇万円をもって相当と認める。

4  過失相殺

証人奥村正治、同辻本睦夫同福本忠及び同亀井肇の各証言を総合すれば、本件コース内においては、スポーツ走行の場合でも通常かなりの高速度(正樹車に衝突した後続車が時速約一三〇キロメートルの速度で走行してきたことは前記のとおりである。)で多数のオートバイが走行しており、その中にまじって一台だけが時速約五〇ないし六〇キロメートルの速度で走行することは高速走行車の流れを阻害することになって危険であることは、運転者であれば誰でも容易に認識しうる事柄であり、また、エンジンの不調や故障のために高速走行車の流れに乗ることができなくなった場合には、前記のとおりコースの両側に設けられている芝生の安全地帯に脱出(コースと安全地帯との間には段差がなく容易に脱出できるようになっている。)するなどして後続車との衝突の危険を回避する措置をとるべきであることは、本件コースで一回でもスポーツ走行をした運転者であれば、特に教えられなくても容易に気が付くことであることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

しかるところ、正樹が後続車の接近に留意することなく、高速車の走行ライン上を漫然と低速走行し、かつ、車体の左側のガソリンタンクの下辺りを触るような不安定で運転をしていたことは前記のとおりであるから、本件事故が発生するについては正樹にも大きな過失があったものといわざるを得ない。

そこで、正樹の右過失を斟酌し、前記1、2の損害額から五割を減じた額をもって被告らの賠償すべき額とするのが相当である。

5  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告らは、本訴の提起及び追行を原告訴訟代理人に委任し、その費用及び報酬として相当額を支払うことを約したことが認められるところ、本件事案の内容、認容額、その他諸般の事情を考慮すれば、原告らが本件事故と相当因果関係に立つ損害として被告に賠償を求めうる弁護士費用の額は、各一〇〇万円と認めるのが相当である。

四  結論

以上の次第で、原告らの本訴請求は、被告に対し、各一一三八万八七二三円並びに右各金員に対する本件事故の発生の日である昭和五八年一一月一三日から支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 笠井 昇 裁判官 阿部靜枝 裁判官 真部直子)

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